【第42号】時代の大転換に思う小企業の親父の危機感②
前号では1981年に開催された『神戸ポートピア博覧会』を中心に、神戸の街が光り輝いていた頃を記述しました。単にノスタルジーとして飾っておくのではなく、これからも輝き続ける神戸を願い記したものです。
神戸が経済的に輝き続けるには、Ⓐエリア以外から富(外貨)を稼ぎ、Ⓑエリア内ではその富を効率的に再分配する機能が決定的に重要です。
1981年前後の神戸では、全国に誇るモデルとして高いレベルで機能していました。2つの機能は主に産業部門が担うことになります。産業部門とは、73,000以上に及ぶ神戸の事業所の事です。民営の事業所数は98.8%その中でも大部分を占める中小企業の役割が重要になります。
中小企業白書によると、中小企業の事業活動に沿って以下の4つの類型化を行いました。
エリア以外から外貨を稼ぐⒶの役割は大企業と①②の事業者が担い、Ⓑのエリア内での効率的な分配は、主に③④の事業所が担うことになります。
エリアの衰退は、外貨を稼ぐ力が衰える。またはエリアで担っていた再分配機能が弱くなることで進んでいきます。弱体化にはそれぞれ原因がありますが、神戸の場合、Ⓐにおいては、大企業を含め相対的に弱体化が進んでいると思われます。Ⓑのケースでは、エリア内事業所から便利さ・安さを前面に打ち出すエリア外資本に置き代わることで進んでいきます。豊かな生活を求め、便利さ安さを求めた結果、地域が疲弊し、他エリアに富が流出してしまう(東京一極集中)。いかにも皮肉な結果です。この事態に向き合う時、北欧視察研修での記憶が鮮明に思い出されます。ノルウェーの小学5年生の社会科の教科書の説明を受けた体験です。
『このサケはノルウェーの漁船が取ってきた近海のサケです。新鮮ですが少し高いです。これは、カナダの大型漁船が北極海で獲った冷凍のサケです。値段は安いです。あなたが少し高いですがノルウェー産のサケを買うと、サケを獲る人、運ぶ人、売り人、関わる人達にお金が回りエリアが潤います。カナダ産を買うと、カナダの人達(他のエリア)が潤います。』
なんと北欧の人たちは小学生の時からこの様な教育を受けているのです。便利さ・効率・安さだけでは、豊かさ、幸福につながらないことを教えています。このあたりの価値観の形成がその地域、エリア、国の豊かさを決めているのかも知れません。
このエピソードはもう一つ大切なことを気づかせてくれます。それは、事業者の自助努力は大前提ですが、地域の豊かさは、消費者(生活者)が決定するという事実です。皆が安いカナダ産を選ぶとノルウェーでも漁業、事業の衰退に繋がりますが、でもそうはなりません。世界幸福度ランキングで北欧の国々は常にトップクラスです。商品・サービスを選ぶ際、価格・品質だけでなく、自分達の生活を守る、真の豊かさを求める視点が備わっているのでしょう。これからの神戸の豊かさはこのように成熟した消費者、生活者が実現して行くのだと思われます。
2023年9月吉日
一覧に戻る